③章の2 インターアクト部のクリスマス会
2年の足立穂香先輩はクラブの部長である。
穂香先輩は水曜日に青垣町方面の女性の買い物支援を担当していて、丹波布を織っていた高齢者の女性と親しくなっていた。そこで、織り上げる糸の染色に興味をもったらしかった。里山の野草の根っこやら木の葉っぱ、栗や桑の実など染料になるものを選んで楽しんでいるそうだ。
「私が染めた糸で編んだミサンガを部員全員にプレゼントするわ。」そう言って、買い物支援で知り合った土田さんから教わった染料についてミサンガ毎に紹介した。「この部分は栗、ここは桑、ここはよもぎ、自然の色って優しい気がしない?」などと言って手渡ししていった。
「来年の夏休みには、丹波布の機織に挑戦させてもらうの。楽しみが増えたわ。買い物支援をさせて頂いている土田朝子さんの孫娘さんが教えてくださるの。ジェシカも一緒に教わるのよ。」
穂香にとってジェシカとは、穂香が意国籍の友人の為に企画し成功させた料理教室から絆が深まった仲だ。穂香は英会話が得意になっていた。
他にも、味噌づくりを体験した者。戦争体験を聞いて作文を書いてきた者、昔の写真を見せてもらいフイルムの写真カメラに興味を持った者。干し柿づくりに挑戦した者。注連縄風のクリスマス飾りの作り方を教わって作ってきた者など次々に発表した。
続いて絆バスの事務局に報告する注意事項、高齢者が買い物で困っている事柄や支援する側が困った事についてだった。高齢者の探す商品名が分からず、尋ねてもピンとこなくて苦労した話などで盛り上がった。他にはスーパーでのキャツシュレス決済についての質問対応にてこずった話。セルフレジ対応に慣れなくて困っている高齢者さんの例。商品選びで簡単な電子レンジ調理品が欲しいのだが、レンジで加熱するときの注意事項が一様ではないから、躊躇している例。それで調理方法を読んであげ、簡潔にアドバイスすると次回からは助かったと喜ばれた話。医療センターで診察後に薬局に処方箋を預けた事をうっかり忘れていた高齢者の利用者さんが乗車時刻になって思い出し慌てた話などがまとめられていった。
達也はこの日、買い物支援で知り合った竹生の技を見て聞いて竹細工の奥深さに興味が沸いた話と、来年の女子大学生との探検の約束についても話した。そして風呂の中でこの前閃きかけた人工知能と人の技の話をしてみた。
「人工知能と人の生活、人の技、例えば竹細工。編組の様々な編み方の基本形とかを人工知能に学習させたらどう展開していくのかな?」その閃きかけた事を一番伝えたくて努力するのだが、苦戦した。
調子者の和也からは、「年上の女子大生との探検てか?いいな。達ちゃん抜け駆けはずるいぞ。俺も連れて行けー 。来年のクリスマスイブには美人の女子大生とデートしてー」と言ったものだから、部活内の女子生徒から「和君調子に乗り過ぎ。」と和也は睨まれた。すると和也は手を合わせて達也に懇願のポーズをとって更にちゃかした。
そうしてクリスマス会をもって年内の部活動は一旦休みになった。
部活動再開は3学期が始まる1月16日からだった。
冬休みの間にも達也は竹細工の技と人工知能との協働について考えた。
編み方は数種類あるのだそう。この前、竹生の指導で虫かごは網代編みの応用で透かし網代編みで編んだ。中の虫を観察しやすいように、けれど逃げないように。
何本竹ひご使ったっけ? よくわからないな。
竹ひごを曲げるのに、ライターやらストーブで沸かしたお湯も使った。曲げると強度はどうかわるのだろう?
竹ひごの太さを同じにして使う本数を変えて行く。パーツの強度をある条件を決めて測り、人工知能に学習させる。今度は使う竹ひごの本数は変えずに竹ひごの太さを変えて強度を測る。種類の違う編み方で決まった形のパーツを作り強度を測る。結果を学習させる。竹の生育環境によってもとの材料の条件も変わるかもな…?
大学に行けば実験結果を数値化して測定する機械があるのだろうか?測り方にも工夫がいるよな。きっと…
作りたいものの形を描いて、用途に適した強度数、製品となった時の許容重量などの条件を叶えた上で、どういう編組を選ぶのか。使う竹ひごのサイズと本数、その組み合わせなど人工知能が提案してくれるかも知れない。
つまり編組のレシピを人工知能が書いてくれそうな気がする。こんなものができたらいいなと言う形は人が考えて人工知能に提案する。すると、編組レシピを作ってくれる。これってこれからの社会に求められる人工知能との協働ということではないか。面白そうだ。5月のゴールデンウイークに人工知能に詳しいと思われる文江の友達に会うのが待ち遠しくてたまらない。